キヤノンという会社について

年が明けて、1月1日から正式にキヤノンの社員でなくなりました。
ここで私が今まで働いてきて感じていた「キヤノン」という会社のイメージというか、感想みたいなものを書いてみたいと思います。
まず、エンジニアとしてキヤノンで身につけられたこと
- 特許に関する知識と出願するためのスキル(明細書作成、特許庁とのやり取り、他社調査などなど)
- カメラの構造や重要技術
- 高品質の製品を大量性生産するためのノウハウ
- 他社とのアライアンス、共同開発に関する知見
- 技術の標準化、規格化に関するノウハウ、実務
などでしょうか。
その他には当然、開発を行うために必要な、企画立案、設計、実装、テスト、リリース、保守などに関する実務的なことは当然身に付かせてもらいましたが、時に上記の点はキヤノンにいたから経験できた可能性が高かったと思います。
特に特許についてはおそらくキヤノンの開発部署にいる方ならみんな頷いてくれると思いますが、それはそれは大変な業務でした。
入社時から年間ノルマがあって、もう苦痛でしかありませんでいた。
若い頃は、「発明なんてそんなに出てくるわけないじゃん」と愚痴を言っていましたね。
でも30年もやっていると、このスキルは気がつくとそれなりに身に染み付いてました。
ありがたいことです。
若い方もぜひ頑張ってスキルを積んでもらえると、将来どこかで役に立つかも知れない代物です。
まぁ、特許についてはその後色々と私なりに思うところもあり、ちょっと真面目に知財戦略については再考した方が良いのではと思うところもあったのですが、それについてはまた別の機会に触れてみたいと思います。
あとは、マイクロソフトやAppleなどのITジャイアントと対等に付き合い、技術的な話や標準を作ったりできたことはエンジニアとしてはとても貴重な体験でした。
これも大企業でないとなかなかこうは行かないことかもしれません。今はベンチャーでも技術を持っていれば可能かも知れませんが、確率的にはやはりキヤノンにいたことが有利になっていたと思います。
品質に関するこだわりは半端ない会社ですので、それはそれは開発としては苦労しました。
若い時は「これがキヤノンの信頼につながるんだ!」と先輩方に言われて、なるほどと思いながら評価部門とやり合ってました。でも、この品質についても私は??と思う部分は結構ありましたが、どうにもできなかったことの一つです。
また、技術以外では
- チーム力の大切さ
- 組織マネジメントの難しさ
- プロジェクト推進のための工夫
- 大企業ならではの組織事情のしがらみ
- 中間管理職の無力さ
などを経験させてもらいました。
私の力不足でどうにもできてないこともありましたが、これらも大企業でなければ味わえない事が結構あったと思います。
会社のイメージを一言で言うなら、「町工場がそのままデカくなって、世界に打って出た成金企業」と言う感じに思ってました。
町工場ですから、技術にこだわり、その技術で世界に挑戦することは間違ってないのだと思います。
そして立派に一時は「グローバルエクセレントカンパニー」と言われるまでになったのですから。
ただ、私が思うに、いまだに日本の町工場の考え方から抜けきれない部分が根底にある気がします。
例えば、キヤノンの勝ちバターンは、後出しジャンケンでした。
新しいことを先頭に立って挑戦するようなことは苦手(できない)で、どこかが成功のきっかけを見つけた後からもの凄い勢いで追いつき追い越して大きなシェアをとって事業を軌道に乗せてきました。
これはこれで立派な戦略なんだと思います。でもこれからキヤノンが挑戦する分野でもうまく行くでしょうか。
これは、もはや町工場ではない規模のキャッシュや信用を持っているのに、その使い方が町工場の価値観から抜け切らない事が影響しているのではと思ってました。
リスクをとって機会を取りに行くよりも、手堅いところにしか投資したくない、といった感じでしょうか。
町工場ですから、リスクは犯したくないのでしょう。
キヤノンの評価は減点方式だと思います。
失敗するとやばいけど、何もしないで無難に仕事をこなす事が評価に値するという雰囲気があります。
やるべきポジションの人が動かないことによる機会損失などについてはお咎めなしなのです。
表向きは多角化や事業ポートフォリオ転換を打ち出してますが、大型買収には大枚を叩いていますが、その後の取りまとめかたが雑で、これからに期待と言う感じです。
要はお金の使い方が下手くそな感じがします。
今までお金を持っていなかった若者が大金を手にしてどう使おうか?と戸惑いながらネットで検索したらバズっているキーワードがあったのでそれにかけてみよう、みたいな感じでしょうか。
今のCEOは会計上の取り組みは本当に素晴らしいのだと思いますので、財務基盤は盤石なのだと思いますし、特に経費削減に対する意気込みは凄いものです。
よく言う、筋肉質の企業になったんだと思います。
ただ、使える筋肉である柔らかい筋肉というよりも、ボディービルダーのような見せる筋肉なのかも知れません。
外部からも指摘されてますが、キヤノンの主力事業の事務機とカメラは市場環境として厳しいです。これからどうなるかはわかりません。
そのため柱となる新規事業を立ち上げることが急務となっています。この取り組みは私が入社した1990年くらいから既に始まってました。
でもいまだにこれと言った成果は出てません。これは何もしてなかったわけではなく、色々と失敗してものにならなかったこともありますし、独自技術に思い入れの強い会社ですから、そう簡単に新しいものが成功するとは限らないので、仕方ないところもあるかも知れません。
ただ、それら今までに失敗してきた開発においてもリソースの使い方がいまいちだったのではないかと思わざるを得ないところがある気がします。
今後は事務機とカメラでどこまで引っ張って、6600億で手にいれたキヤノンメディカルシステムズや3300億で手にいれたアクシスをどのように活用して、シナジーを出していけるか、そこで新規事業を立てていけるか、それにかかっていると思います。
やっぱり、30年以上いたので、書ききれませんね。
また今度書きたいことが思いついたら書こうと思います。