ソフトウェアを資産化する2

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前回に続いてソフトウェアの話を。

私はソフトウェアと言っても古い技術でなんとかなる分野が大半でした。そもそも私が現役バリバリで設計や実装していた頃は今のようにスマホもなければYouTubeもありませんでしたので、ソフトウェアの活躍する分野が狭かったのはしかたありません。

また、ソフトウェアを動作させるためのコンピュータなどのハードウェアも今ほど低価格で高性能なものは用意できませんでした。

ですから当時私が行っていたソフトウェアに関する仕事で、最も優先される設計・実装上の注意点は、「いかに少ないハードウェアリソースを有効活用して高速に動作させるか」という事だったと思います。

ここにエンジニアの腕の見せ所があり、美徳とされていた気がします。

当然その大前提には「きちんと動き、安心して使える品質」というものがありましたが。

私が開発していたソフトウェアが機器の中で動くものでしたので、当然といえば当然で、それはこの分野のソフトウェアでは今でも重要なファクターではあります。

しかし、おそらく当時はソフトウェアエンジニアの活躍する分野が大きく分けると、私のような機器組み込みのソフトウェアと銀行などの大型なコンピュータ(メインフレームなど)で動く業務ソフトウェアくらいしかなかったのではないかとも思います。

銀行などの業務用ソフトウェア開発は経験したことがないのでよくわかりませんが、それはそれでおそらく今の世の中で一番使われているであろうスマホのアプリやWebアプリとはまただいぶ異なった類のものであったことは想像がつきます。

組込ソフトの分野はソフトウェアと言ってもそれが組込まれたハードとして売り出されて使われるので、その取扱方や開発に関する考え方などもハードウェア開発と同等に扱われてきた感じがあります。

世の中は技術が発達し、安くて高性能なコンピュータが大量に使えることになりました。それにより、スマホやタブレットなどが普及し、インターネットの機能も大幅に多様化したので、今のように個人が手軽に色々な目的でソフトウェアを利用する機会がもの凄いスピードで広がってます。

そうなると、ソフトウェアに関する開発も相対的に従来の「組込ソフト」や「業務用基幹ソフト」のボリュームは低下していきました。

気がつくとソフトウェア開発のためのエンジニアの求人なども、それら分野のエンジニアよりもWeb系ソフトウェアやモバイルソフトウェア向けが増えており、人が足りないと言われたりしています。

日本のソフトウェアがいまいち世界の波に乗り切れていないのは、こうしたソフトウェア業界のパワーバランスの変化にあまりうまく対応できなかったことも影響しているのではないかと思います。

銀行システムも、組み込みシステムも、おそらくソフトウェアの中ではもの凄く品質が重要視される部類に入るともいます。

ですから絶対に壊れない、止まらない、間違えないものを一発で決めないといけないという思いが強いです。

そして組込ソフトに関しては、前述したように、「少ないハードウェアリソースで高速に」が正義ですから、そのためにエンジニアはある意味トリッキーな手法や多少わかりずらくても効果が出るものを取り入れてきたと思います。

しかし、これらのソフトウェアは作った本人ですら、下手をすると数年後には解読困難なものになっている可能性もあるようなものです。

ましてや誰かがそれを再利用して生かしていくなどというのはそう簡単ではない場合が多かった気がします。

ソフトウェアがそれを開発する個人に強く依存していて、本当の意味でその人の「作品」になっているようなところがありました。

確かにそのような凄く優秀なエンジニアは絶対に必要です。そういう人たちが新しい物を作り出していくことは多いでしょう。

でも、それだけでは裾野が広がらないのではないでしょうか。

スマホやWebで使われているソフトウェアはもの凄く高性能なハードウェアと多くの先人たちの創意工夫に富んだ仕組みの上に成り立っています。

そこは個人の技術だけに頼るのではなく、みんなでより良いものを造り上げていくという思想のもとに成り立っているところがあります。いわゆるオープン志向ですね。

それは自分の成果を誰かに活用してもらうことが前提で組み立てられています。

日本の開発現場はそのような枠組みの中で有効に活動できていたとは到底思えません。

色々な理由はあると思います。自分達を正当化するための言い訳もたくさん上げる事はできます。

でも、結果としてソフトウェアの業界で今の日本の存在感はとても低いと言わざるを得ない事はもっと正直に受け止めて、自分達の考え方や手法などを改善していかないといけないのだと思います。

ソフトウェアの資産化は自分達の中だけでとどめて考えていたのでは、おそらくもはや立ち遅れていくものなのかもしれません。

33taka77
  • 33taka77

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